幻冬舎ゴールドライフオンラインにて「落花流水のように」6回目連載
そういえば「男と食事済ませても」なんて言ってたけど、私には彼はいない。たった一人だけ大好きになった人はいたが、その人はもうこの世にはいない。その人の名前は本郷ほんごう圭人けいと。
それは八年前に遡る。私は恋愛に奥手で、三十歳を迎えた時、彼氏いない歴三十年だった。あ〜あ、このまま、おばあちゃんになっちゃうのかな。
それから三年間付き合いが続いた。そして、私と圭人は結婚することになった。ずっと一緒と約束したのに、結婚式の当日、圭人はバイクで事故を起こし、圭人の姿は結婚式会場にはなかった。
圭人が亡くなってから五年、私は恋愛に臆病になっていた。また、私は置いていかれるのかと……いや、圭人以外に愛する人は現れないと思っていた。圭人という枝にしっかりとしがみついて離れることはなかった。それなのに南條さんに惹かれている。叶わぬ恋と分かっているのに……彼には彼女がいるんだから、今日も彼女さんとデートだし。そう思ったら涙が溢れてきた。
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