「戦国武将織田信長の不器用な恋」第二章 信玄に抱かれたのか①
「大丈夫です、私の方こそすみませんでした」
「いつも信玄様は女性に甘いんですから」
信玄様?さっきもそう聞こえたけど、まさかと思っていた。
でもまた、言ったよね、はっきり言ったよね、信玄様って。
「武田信玄様ですか」
「そうだが、どこかでお会いしましたか」
「私、信玄様が大好きです、ずっとお会いしたかった、夢が叶って嬉しいです」
「それは光栄です、もしよかったら私の城に招待したい、これからご一緒にいかがですか」
マミは「はい」と即答した。
信玄は女性に優しい、甘い言葉を囁くのはお手のものだ。
容姿淡麗、甘いマスク、蕩けるような言葉、全ての女性は信玄を好きになってしまう。
お供をしているのは真田幸村、女は苦手で、優しく出来ない性分だ。
マミは信玄と幸村と共に城に向かった。
その頃、マミの姿が見えないことに城内では大騒ぎとなっていた。
「マミはどこに行ったのだ」
信長はオロオロと落ち着きのない様子を見せていた。
まさか信玄に会いに行ったのか。
信長は「出かける、馬を持て」と家臣に命じた。
「お館様、どちらに行かれるのですか」
信長にそう言葉をかけたのは秀吉だった。
「信玄の元にマミを迎えに行く」
「失礼ながら、マミは自分の意志で武田信玄の元に向かったのであれば、迎えに行く必要はありませぬ」
「このまま、信玄の女になっても構わぬと言うのか」
「マミの意志なら、迎えに行っても帰ってきません」
「力づくで連れ帰る」
信長は馬を走らせた。
「お館様、お待ちください」
しかし、秀吉の言葉は信長には届かなかった。
その頃、信玄の元で、甘い言葉を囁かれたマミは蕩けそうな表情をして、信玄の傍らに寄り添っていた。
「マミ、お前は美しい、お前を離したくない」
「信玄様」
「ずっと、私の側で使えるのだ、良いな」
「はい」
マミはぐっと腰を引き寄せられた。
「ああ、信玄様」
「そういえば、お前はどこからきたのだ」
そう言われて、我に帰った。
信長様の元を黙って出てきてしまった。
心配しているかな、絶対に怒鳴られるなあ。
「あのう、信長様の城でお世話になっていました」
その言葉に信玄は顔いろを変えた。
「お前は織田信長の女か」
「違います、怪我をしたところを助けて頂いただけです」
マミの脳裏には信長との熱い抱擁が蘇った。
その時、信玄の家臣が慌てて信玄の元にやってきた。
「恐れながら申し上げます、織田信長がお館様に御目通り願いたいと申しております」
「なんだと、織田信長が……」
なんで信長様がここに……
マミは信じられないと言った表情を見せた。
信玄の答えを聞かないうちに、信長はずかずかと城内に入ってきた。
「マミ、マミはおるか」
「信長様?」
信玄の傍らに寄り添っているマミの姿を見つけて、信長の表情が変わった。
信長はマミの腕を掴み、引き寄せた。
「帰るぞ」
そう言ってマミの腕を引っ張った。
「待て、信長、マミはお主の女か」
信長は信玄の言葉に反応した。
そして、信玄の方を振り向き、言葉を発した。
「俺の女に手を出して、命が助かっただけありがたいと思え」
信長はマミの着ていた着物を脱がせ、自分の持ってきた着物を羽織らせた。
そして、肩に担ぎ上げて、その場を後にした。
外に出ると、馬に跨り、城をめざした。
「信長様、降ろしてください」
「お前の意見は聞いておらん」
信長は馬を走らせた。
城に到着すると、家臣が心配そうに集まってきた。
秀吉、政宗も近づいてきた。
「お館様、ご無事で」
信長はマミを担いだまま、城内を進んだ。
「助けて、秀吉さん、政宗さん」
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